魅力の宝庫 大瀬崎
沼津駅から南に車を走らせる。
しばらく走ると潮の匂いを感じ、眼前には日本一深い駿河湾の眺望が飛び込んで来る。日本一の富士山、日本一の海を感じながら、約1時間ほど車で走ると、駿河湾にポコンと飛び出た半島に辿り着く。特徴的な巨木の存在感、青く澄んだ海の爽快感、海越しに望む富士山の雄大さに誰しも圧倒されるだろう。
半島の先には神秘的な言い伝えもある神池、素晴らしい彫刻が施された大瀬神社、国の天然記念物であるビャクシンの群生まで存在する。
こここそが魅力の宝庫、大瀬崎である。
透明度抜群の大瀬の海 西伊豆の横綱・ダイバーの聖地
大瀬は海水浴場としての人気はもちろん、スキューバダイビングのメッカとして、全国から一年を通して多くのダイバーが訪れる。
大瀬には、いくつかのダイビングサービスがある。器材等のレンタルもあるので、安心。
3月のまだ気温が低い日、大学生10人ほどが大瀬を訪れていた。話を聞いてみると、都内の大学に通う学生で、ダイビングの資格を取りに10日間、大瀬に泊まるのだそう。
「ここにいるだけで大自然を感じる!富士山が見える!透明な海!とにかく気持ちいいんです!」
と笑顔で話す。都会の喧騒を離れて、自然溢れるこの地に癒され、英気を養い、都会に戻り、また大瀬に戻ってくる。そんな場所にもなっているのだろう。
大瀬は、南西に張り出した岬と山とで3方を陸で囲われた自然の堤防を有する。そのおかげで一年を通して波が穏やかで、安定したダイブが可能であり、ダイビング初心者にも安心だ。いつでも潜れるというのも多くのダイバーに選ばれる魅力のひとつであろう。
ダイバーが訪れる魅力はそれだけではない。駿河湾に面していることで、内海と外海の海相の違いがはっきりしており、たくさんの種類の生物が生息している。
水の綺麗さによって、珊瑚が海中に華麗な花を咲かす様子も見ることができる。潜水場所によってその表情は様々で、お気に入りポイントを探す楽しみもある。初心者から上級者まで誰もが楽しめるダイビングの魅力がここ、大瀬には集約されている。
自然の恵みだけではない。大瀬の魅力をたくさんの人に知ってもらおうと、毎年10月にはハロウィンのかぼちゃ、12月にはクリスマスツリーで海中を装飾する。「大瀬を選び、訪れてくれたダイバーさんに少しでも楽しんでもらえたら。」そんな気持ちで、工夫を凝らす。その成果が表れている。毎年6月に行われるビーチクリーンには全国から多くの人が参加する。ダイバーたちのまた帰ってきたい場所に、心のふるさとに、大瀬がそんな存在になっているのだろう。
大瀬を支える人
そんな魅力あふれる大瀬について、地元沼津を愛し、誰よりもこの大瀬を愛し、大瀬を支える人、「大瀬海浜商業組合」の組合長であり「オーシャンビューフジミ」代表の高野貴好さんに、お話を聴かせていただいた。
映画「彼女が水着に着替えたら」が放映された1989年、バブル絶頂期。「ひと・ひと・ひとで、足の踏み場もないくらいだったんだよ」と懐かしそうに語り、当時の写真を見せてくれた。
時代は流れて、令和になった現在。どこにも人が溢れた時代から、人が訪れる場所を選ぶ時代へと変わっていった。その中でも大瀬を選び、訪れてくれる人たちがいる。
「スノーケルを覗けば、魚が泳いでいるのが見れるんだよ。だから、小学生くらいの子どもは喜んで、一日中海に入ってるよ」と、その光景を浮かべながら優しく笑う高野さん。
2006年、環境省から「快水浴場百選」に選定された。
それは「安らげる水辺」「美しい水辺」であるという証明である。その評価に相応しい海であるために、迎え入れる側もまた、自らその魅力を感じ、守り、伝えていくことが必要である。
多くの人が訪れてくれることが必ずしもいいわけでない。大瀬の魅力を感じ、また来たいと思い、再び訪れる機会を持ってもらう。そんないい循環が生まれている今、これからの未来にも繋げていくことがこの地を守るためにも必要かもしれない。
目に見えない力が宿る
大瀬の魅力は海だけに留まらない。
大瀬崎の先端に存在する「神池」だ。
伊豆七不思議のひとつとして知られるように、海から間近のところにあるにもかかわらず、まさかの淡水池。富士山の伏流水が地下から湧き出しているとする一説もある。
「とても神聖な場所なので、誰もその真相を探ろうとはしないんだよ。」
と高野さんは言う。真相を明らかにする必要もないのだろう。そこに神秘的な池が存在するということ、それを誰もが大切にしているということ。
それこそ未来に伝えていくべきことだと誰もが知っているから。
半島の中央付近に位置する「大瀬神社」。
約1500年前に建立され、古くから駿河湾漁民の信仰の象徴、海の守護神を祀る神社として、多くの人々の崇敬を集めている。社には細かな彫刻が施され、その繊細さと力強さを併せ持つ姿に釘付けになるだろう。
天下の奇祭 大瀬まつり
毎年4月4日には、天下の奇祭として名高い「大瀬まつり」が大漁と安全を祈念してこの地で行われる。
大瀬まつりが奇祭と呼ばれるゆえんは、全ての漁師をはじめとした男性乗船員が女装をすることにある。漁師のみならず、近隣一帯の青年団や水産関係者、地元市役所の男たちも参加して祭りを盛り上げるが、彼らにも例外はない。
普段は船に乗って沖に出る屈強な男たちが、顔にオシロイを塗り、唇に口紅を乗せ、女性用の白い襦袢(じゅばん)と、赤やピンクの華やかな着物を身に纏い、船の上で『ちゃんちゃらおかし、ちゃらおかし』と踊る様はまさに「奇祭」と呼ぶにふさわしい迫力だ。
明治から続く伝統行事である大瀬まつり。
女装した男が『踊り舟』で海に向かい船上で賑やかに「ちゃんちゃらおかし、ちゃらおかし」と舞踊することで、男神とされる海の神を喜ばせたことが起源とされるが、今も昔も、航海の安全や大漁を祈る気持ちは変わらない。
ぜひこの日このときに、沼津に足を運んで、天下の奇祭を目に焼き付けにきていただきたい。
大瀬まつりについて、最新の情報はこちらから!↓↓
http://www.osezaki.jp/osematuri.html
その迫力に感動を覚える、国指定の天然記念物
大瀬崎一帯は百本以上の自生したビャクシンに覆われ、全国的にもこれほど群生する地は稀であり、国の天然記念物に指定されるほど。
中でも、「夫婦ビャクシン」は、樹齢1500年を超えると言われており、ビャクシンの特徴である捻れた幹で、力強くそびえ立つ姿を目の当たりにすると、誰しもが立ち止まり、ただ黙ってその壮大な姿を見上げるに違いない。
この小さなエリアに、魅力的で不思議なものたちが存在する地。昔からこの地には目に見えない力が働いていると思わざるを得ないほどである。誰もが「パワースポット」と思ってしまう所以だろう。
地元の人も知らないこの地の魅力を
はじめて訪れた大瀬。とても不思議で魅力的なエリアであると感じた。時代の流れとともに洗練されて今の風景を作り出している。パワースポットとして知られる大瀬神社、景色、歴史、人、神秘的な雰囲気からそのパワーをびしびしと感じた。ここに繰り返し訪れたくなる理由を知ることができた。
大瀬は、沼津に住む私たちが誇りにしたくなるパワーの源、宝物のような場所だった。
この地を支える「大瀬海浜商業組合」
「大瀬に来てくださる方に最高のおもてなしを」と尽力されているみなさまです。
この記事を書いた人
杉浦 希未子
Sugiura Kimiko
スポーツ大好き!沼津のスポーツ情報を集めた、ローカルwebメディアぬまスポを運営しています。大阪出身、沼津に来て十数年。沼津にどっぷりはまってます。